だんだん寒くなってきた。
僕はこの季節になると必ずあることを思いだす。そう、授業中に鍋をしたあの日のことを。
そしてなにより、その日起こった理不尽な出来事のことを。。。
僕がまだ高専に通っていた頃の話。
(※高専とは、高校と短大がくっついたようなもので、「5年間クラス替えがない高校」だと思ってもらえれば大丈夫だ。)
その事件は、昼休み直後の「生産工学」の授業中に起こった。
40人しか入らない狭い教室で、いつもと同じように適当に先生の授業を聞いていた時、、、
先生は挑発的な一言を発した。
その後の授業内容は全く聞いていない。だって先生から「授業中に鍋をやれ!」とフラれてしまったんだから。
授業も終わり、僕は友達3人と集まって打ち合わせを開始した。
とは言っても、僕たちの席は教卓の目の前で奇跡的にまとまっていたから、席から移動することはなかったが。
マサ:え、あれってフリやんな?
友達①:あれはフリやな。
友達②:あの感じはやれってことやろ
友達③:逆にやらんとかあるん?
全員:ほな、、、、、
やろかwwwwwwwwwwwwwww
ということで、授業中に鍋パをやることが決まった。
実際に鍋パをする日程だが、ちょうど1週間後、今日と同じ時間に決行することにした。
鍋の前にお弁当を食べると、お腹がいっぱいになって残してしまうリスクもあった。そこで決行日はお弁当を抜きにして、授業中の鍋を心行くまで堪能することにした。
次に決めるのは鍋の味だ。”なに鍋”にするかはやはり重要なポイント。せっかく昼ご飯を抜きにするんだから、適当なものは食べたくない。
キムチ鍋やカレー鍋などの案も出たが、さすがに匂いがきつくてクラスメイトに迷惑をかけてしまうということもあって、普通に寄せ鍋に落ち着いた。
(※授業中に鍋をされるだけでクラスメイトにとっては十分迷惑だが、その時は匂いに注意すればセーフという謎理論で話は進んでいった。)
あとは各自が担当する準備物を確認して、鍋パの話は終わりにした。
ちなみに、僕は友達グループのなかで一番家が近かったから、寄せ鍋セット4つを担当した。
友達たちは、ガスコンロやボンベ、シメまで楽しむためのご飯とネギなどを担当した。
決行前日、500円の寄せ鍋セットを4つ購入してから家に帰った。(お金は後からもらった)
もうこの辺りからワクワクが止まらなかった。
僕は鍋があまり好きじゃないから、こんなに鍋を楽しみにしたのは初めてだし、もう今後もこんな感覚は味わえないだろう。
その日の夜は、まるで翌日に遠足を控えた小学2年生のように、興奮で眠れなかったような気がする。
そして決行当日僕は、目覚ましが鳴る10分前に飛び起きるくらいの勢いで、30分寝坊した。
きっと前日にワクワクしすぎてあまり寝ていなかったからだろう。
筆箱や教科書などいつもの荷物と寄せ鍋セットを持った僕は、いつものように学校に向かった。
そして教室に入り、担当した荷物をしっかり持ってきたか友人たちと確認した。
みんな相当楽しみにしていたのだろう。誰一人、荷物を忘れることなく、鍋をする準備が整った。
そして昼休み。いよいよあと1時間で、”授業中に鍋パをした初めての人類”として名を残す瞬間がやってくる。
僕たちは机の上から勉強道具を片付け、4人の机を合体させた。そう、そこはもう、小学校の給食で見慣れた風景。僕たち4人の周りだけ、10年ほどタイムスリップしたような違和感が教室を包み込んだ。
こうなればもう、完全にこっちのペース。鍋の匂いで迷惑をかけるかもしれないと心配していたクラスメイトたちも、これから行われる宴に興味津々の様子。
教室内
うぇええええええええええええいいいいいいい(動物園風)
完全に鍋の準備が終わったのは授業が始まる30分前。
そこらへんで鍋人(なべんちゅ)たちの空腹が限界を迎えたのか、とりあえずもう鍋を始めようという空気が流れ出す。
確かに授業を開始してから鍋を始めると、授業内にしっかりシメまで堪能できるか怪しいところはあった。
そこで、とりあえず鍋を始めて、授業開始あたりでシメの雑炊に行けるようにしようと予定を変更した。
そこからはもう、シンプルに鍋を囲む4人の男の集まり。
そこが教室の中、それも教卓の目の前とは思えないくらいに。
(教卓の目の前で鍋を囲んでいる写真。僕がどういうテンションで鍋を指さしているのかは、今となっては分からない。)
寄せ鍋セットを開封して、ガスコンロのスイッチを入れた。そして煮込み始めて1分後、ちょっとしたアクシデントが発生した。
副校長(実質トップ)が教室の前を通ったのだ。それも”完全に僕たちと目が合った状態”で。
副校長が教室の前を歩くところなんて今まで見たことがない。5年制の学校の最終学年にして初めて、副校長が教室の前を通ったのだ。
それも、僕たちが鍋をしているタイミングに。クラスメイトの誰かがチクったとしか思えないような出来事だった。
副校長は、僕たちと目を合わせながら教室を通り過ぎていった。
そして5秒間のタイムラグを経て、二度見のために教室まで帰ってきた。完全にバレているようだった。
副校長は、おそらく数十年の教師人生のなかで初めて「教室のなかで鍋をする生徒」を見たはずだ。
目を丸くした副校長は、特に何も言わないまま帰っていった。衝撃すぎて逆に言葉が出てこなかったのだろう。
僕たちは買ってきた寄せ鍋セットを煮込みながら、なんとか作戦を続行できることを喜んだ。
そして、先生がどんな反応をするか予想した。
「絶対に怒らないなんて言っていたけれど、結局いざ目の前で鍋をする生徒がいたらさすがに怒るだろう」というのが僕たちの総意だった
当然だ、授業中に鍋をやっているやつなんで、どう考えても頭がおかしいのだから怒って当然。いや、むしろ怒らなきゃいけない。
こんなことを見逃してしまったら、もう学校がなんなのか僕は分からなくなってしまう。
うん、逆に怒られたい。
絶対に怒らないと言っていた先生を怒らせたい。
怒られて反省しているふりをしながら、心の中を達成感で満たしたい。
”先生に怒られたい”という、僕の中の「Mの部分」が最大限に増幅しきったとき、昼休み終了のチャイムが鳴った。
いよいよ、決戦の時。
ほこ×たて風に言うと「絶対に怒らない先生 VS 絶対に怒らせる鍋人(なべんちゅ)」が繰り広げられる瞬間が、もうそこまでやってきている。
僕たちは先生を怒らせるために、ヘラヘラするよりも、当然のような顔で鍋を囲んでいたほうが効果的と考えた。
なので僕たちは、チャイムが鳴った瞬間から完全な真顔で鍋を食べ続けた。
もうそこは、完全に食卓。仲の悪い4兄弟が、嫌々鍋を囲んでいるかのように、ただ無言で鍋を食らった。
そろそろシメの雑炊に移ろうと、友人が持ってきたタッパー入りのご飯を取り出したとき、ようやく先生が教室の中に入ってきた。
こぼれそうになる笑いを必死に抑える僕たちと、授業中に鍋をしている生徒を見つめる先生、そして両者の共演に興奮するクラスメイト。
まるで人種のサラダボウル。本家アメリカも驚きだろう。
なんて言って怒るんだろうか。
「ふざけるな!」
「本当に鍋をする奴がいるか!」
「なめてんのか!」
考えつくのはこれくらいだろうか。
全然怖くない。いや、むしろ嬉しい。
絶対に怒らない先生を打ち負かした鍋人として、歴史に名を刻みたい。
はやく怒ってぇぇぇぇぇえええええ
また僕の中の「Mの部分」が顔をだしてきたとき、先生はその一言を発した。
机は前に向けろ
え?机は前に向けろ?
そこ?そこじゃなくない?
いやいや、そこじゃないやろ
絶対そこじゃないって!
もっと怒るとこあるやん!
授業中に鍋やってるんやで!?そんなん許したらあかんやん
え、なにこれ、鍋やり損やん
こんなんやったら鍋やらんかったらよかったやん
完全に俺らの負けやん、、、、、
完敗だった。その先生は、強いリアクションをとれば僕たちが喜ぶことを知っていた。
人間がされていちばん嫌なこと、そう、無視をされたのだ。完全にむこうの方が1枚上手だった。
その後、元・鍋人たちはさっさと机を前にして、普通に授業を受けた。さっきまではクラスの英雄だった僕らも、今となっては敗走兵。
その後の80分が苦痛だったことは言うまでもない。
苦痛の80分が過ぎた後、担任が校内放送を使って僕たちを呼び出した。きっと副校長が担任に報告したのだろう。
そうか、僕たちにはまだ希望が残っていた。担任を怒らせればいいのだ。
敗走兵たちは元気を取り戻し、次の合戦場(担任の研究室)に向かった。
合戦場に向かいながら、僕たちは戦い方の打ち合わせをした
「なんで教室で鍋なんかやったんだ!ダメに決まってるだろう!」
きっと担任たちはこう攻めてくるだろう。
それに対する秘密兵器を僕たちはすでに準備していた。そう、校則だ。
僕が通っていた高専は私服での登校が許されているほど校則がゆるゆるで、特に実用的なことはほとんど書いていない。
もちろん、「第2条ー第4項:教室の中で鍋をしてはいけない」みたいな校則があるはずもなく、事実上教室内での鍋を禁止できるものはなかった。
僕たちはこれを秘密兵器として使うことを決めていた。今になって考えると、教師からすれば鬱陶しいガキどもだっただろう。
合戦場には、担任と副校長が待っていた。上等だ、やってやる。絶対に論破してやる。
担任:教室で鍋をやってたって聞いたけど、君たちがやったの?
鍋人:はい、僕たちがやりました
担任:それは昼休みの時間にやってたの?
鍋人:昼休みから3限目の頭までやってました。
担任:なんでそんなことしたの?
鍋人:先生が授業中に鍋をやれと言ったので(言ってない)
担任:本当にそんなこと言ったの?
鍋人:はい、言いました(確実に言ってない)
担任:まあそうだとしても、鍋をするのはダメだよね。
鍋人:やっぱり、そうですか
担任:だって、、、
火災報知器なっちゃうからさ。
え?火災報知器?
聞き間違いかな?火災報知器って言ったの?
いやいやいやいや、だから違うって。火災報知器とかそんな話じゃないやん!お前らもか、揃いもそろってわけわからんこと言いやがって!
机を前にしろとか、火災報知器なるからあかんとか、、、
じゃあ机を前にして1人鍋しながら授業聞いてるやつとか、IHで鍋してるやつは「OK」ってことになっちゃうで!?
授業中に鍋やってるのがやばいんじゃない!?それがやばいと分かったうえで、それを実行してるのが面白かったんやで!?
そこを突っ込んでくれんかったら、俺ら完全にスベってるやん。。。
なんやこの学校、アホばっかりやで(特大ブーメラン)
このあと僕たちは、授業中に鍋をしたことではなく、教室内でガスコンロを使ってしまったことに対する謝罪を副校長にして、研究室を出た。
こうして「絶対に怒らない先生 VS 絶対に怒らせる鍋人」は、人類史上最大のブーメランが刺さった僕たちの完敗という結果に終わった。
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